えみこ日記

10年以上も前からマニュアル違反の調理を黙認していた市の責任は?平成クラブ提出の決議案に対する反対討論

2020.08.07 Friday

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    議長の許可がありましたので、議第10 号議案「児童・生徒に安心で安全な学校給食を提供することを求める決議」について、反対の立場で討論いたします。

    まず、最初にこのような形で反対することは、なんとしても避けがたいと思い、議案提出者の平成クラブ会派代表者に、一部修正を申し入れをしましたが、会派として修正を受け入れないとの回答があり、やむなく別途、提案することになりました。

    今回の平成クラブが提案した決議案には、事業者に責任があり、事業者を責める項目が目立ち、安全安心な給食を提供しなければならない高度な義務を負う市の責任については全く触れていません。
    確かに、今回の食中毒は、市の委託を受けた東部給食センターのマニュアル違反の調理方法に起因するものであり、東部給食センターの責任は重大であり、弁解の余地がないことは明白です。

    現在、東部給食センターによる保護者や教職員対象に、7月29日の松の木小学校での説明会を皮切りに、24回にわたり学校給食食中毒事件についての説明会が行われており、明日給食センターでの最後の説明会を残すばかりになっています。
    この間、事業者からの説明会に出席された保護者からも、市や教育委員会の対応に疑問があるとの報告もたくさん寄せられています。

    学校給食は我が国の未来を担う児童生徒の健全な育成・発達のために、また望ましい食習慣の形成や食文化の涵養、醸成を目的とした食育の観点からも極めて重要な位置づけになっています。食は生活の基本であるだけでなく栄養学的にはもちろん、生活習慣など我々の生存と文化の様々な側面を持ちますが、「安全である」ことが不可欠の条件です。

    特に学校給食は教育の観点から給食を受ける児童生徒の選択権が無く、感受性の高い年齢層であるためにその食事には厳しい安全性が求められます。さらに、学校給食は大量調理を行うために万が一事故が発生した時には大規模な発生となり、しかも成長過程であるために成人よりも重症化しやすいことから常に最大限の注意を払う必要があります。事故を起こさないために衛生管理はもちろん、調理方法についてもマニュアルに沿った適正な調理方法が求められる訳です。学校給食関係者は、常にそのことを自覚し、その社会的責任を果たさなければならないのです。

    しかしながら、長い間、聞くところによれば10年以上も前からマニュアル違反による調理方法を行ってきたと聞き、今回の事故は起こるべくして起こったことと認識しています。今回の食中毒では、重篤な患者や死亡者がでなかったことは、不幸中の幸いですが、一歩間違えば大変なことになっていた可能性もあり、さらには、多くの児童・生徒に大きな心の傷を残したことは否めません。

    東部給食センターと八潮市との給食取引基本契約書の第3条第7号には、指導、報告として、次のような規定があります。
    「発注者(八潮市)は、受注者(東部給食センター)に対して給食品の取り扱いについて指導・助言をすることができるものとし、必要な報告(実地調査を含む。)又は資料の提出を求めることができる。」となっています。
    平成21年4月1日から施行された「学校給食衛生管理基準」では、給食の食品は、原則として、前日調理を行わず、全てその日に学校給食調理場で調理し、生で食用する野菜類、果実類等を除き、加熱処理したものを給食することとなっています。

    ちなみに、平成30年6月議会において、給食への異物混入についての一般質問に対する答弁では、「未然防止のための対応マニュアル作成についてでございますが、現在、八潮市の学校給食は全面委託方式ですので、給食センターが文部科学省が作成した「学校給食衛生管理基準」や「大量調理施設衛生管理マニュアル」にのっとり、独自にマニュアルを作成し、原材料の選別、洗浄、下処理など、異物の混入や食中毒などの事故が起こらないよう未然防止に努めているところでございます。」と、答弁しています。

    しかしながら、10年以上もこの基準に反した調理方法を継続していたことは、この指導・助言が適切に行われていたのか甚だ疑問です。

    先に述べたように、学校給食は教育の一環として行われる以上、給食を実施する市は、児童・生徒の命や体の安全に注意を払う義務があり、食中毒などが起こらないように細心の注意を払うなど万全の措置を行う義務があるにもかかわらず、10年以上もの間、マニュアル違反の調理を黙認し、結果として多くの被害者を出してしまったことについて、市の責任は免れません。

    今回の平成クラブ提出の決議案には、市の責任については全く言及されておらず、今回の食中毒の原因は事業者のみに責任があるかのようなスタンスです。

    議会は、市民の代表である議員で構成され、行政のチェックが第一義的な仕事です。今後、このような不幸なことが二度と起こらないようにするためには、原因究明はもちろんですが、キチンと発注者としての市の責任を明らかにし、被害者や保護者に謝罪をし、その上で安全で安心な給食を、児童生徒に提供できるようにしなければなりません。
    その上で、議会も協力できることは協力していくことが、二元代表制の本来の議会の在り方です。
     
    言い換えれば、この点についての言及が全くない決議案には同意できないばかりか、何のための決議かと疑問があるため反対いたします。