えみこ日記

今だから語れる『多様性の尊重』条項を含む八潮市議会基本条例可決までの裏話

2019.03.21 Thursday

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    2019/3/21朝日新聞埼玉版
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     昨日の議会最終日に、「多様性の尊重」条項を含む八潮市議会基本条例が全会派一致で可決されました。昨年11月に開催した「京都フォーラム」や、今年3月7日にクオータ制を推進する会(Qの会)主催の院内集会でも、「成立見込み。但し議会はいつ何時何が起こるかわからないため、あくまでも見込み」と、ご紹介していました。

     実は、昨年5月に「政治分野における男女共同参画を推進する法律(候補者男女均等法)」が成立してますが、私は、「クオータ制を推進する会」の役員の一人として、この法律の制定に向けて奮闘してきました。

     そんなこともあり、せっかくできた法の趣旨をこれから作る議会基本条例に何か形として入れることはできないか…と考えていました。

     もともと、全国フェミニスト議員連盟で女性議員を増やす活動を続けてきていますが、一昨年、熊本市議会に赤ちゃんを連れて議場に入った緒方夕佳さんのことが大きく報道され、まだまだ女性が担うことが多い介護とか育児等と議会活動ができるような条項が必要ではないかと思うようになりました。

     しかし、八潮市議会では、私は少数派。まして「男女共同参画」や「男女平等」という言葉を聞いただけでアレルギーを示す男性議員もいることや、市議会の大会派には女性もいるのに、どんなにいいことを提案しても数の論理で受け入れてもらえないことが度々あります。
     
     例えば、私は、いつも女性や子どもに関する意見書を数多く提案しており、この3月議会には、「ハラスメントを禁止する包括的法整備を求める意見書」「野田市DV・虐待事件のような痛ましい事件の再発防止を求める意見書」「生態系への影響が指摘されているネオニコチノイド系農薬の規制を求める意見書」の3件を提案していましたが、すべて平成クラブと公明党の反対で否決されました。

    環境問題のネオニコチノイドの意見書はともかく、公明党代表の小倉順子議員は、3月議会で野田の虐待事件に関連して虐待問題の一般質問をしていたにもかかわらず反対しています。これってご自身の中で矛盾を感じないのでしょうか?

     そんなこともあるので、あれこれ考えた結果、今、多様性の尊重という大きな流れがありますので、私なりに知恵を絞って、推進法のことには一切触れずに「多様性の尊重」として、「議会は、議会の機能強化のため、議会活動と、育児・介護等が両立できる環境整備等に努め、多様な立場の市民の声が反映されるようにしなければならない。」という条項を提案しました。
     
     この条項については、上智大学教授の三浦まりさんや駒澤大学教授の大山礼子さんからも「画期的で素晴らしい条項」との言葉を頂戴していました。そして院内集会に参加していたマスコミ関係者から「成立したらぜひ取材したい」と依頼もありました。

     たまたま、あるマスコミ関係者から「この条項は全国初ですか?」と聞かれ、「多分・・・」と答えたところ、「どこで確認できますか?」と言われたので、私は「全国市議会議長会か法政の広瀬克哉さんか山梨学院の江藤さんならわかるのではないか…」と伝えました。

     伝えてから、もしかしたら八潮市議会の議会基本条例の研修講師としてお願いした大和大学准教授の田中富雄さんもわかるかもしれないと、問い合わせのメールを出しました。

     ところが、田中さんから「大怪我をして入院中で、対応できないので、龍谷大学の土山希美枝教授か法政大学副学長の広瀬克哉教授に聞いてください」と、ご本人からでなく代理の方からのメールが返ってきました。

     そこで、龍谷大学の土山希美枝教授に、メールでお聞きしたところ、すぐに「この多様性の尊重の項目の追加、たいへん重要なことで、他の類似事例は聞いたことがありません。」と、お墨付きをいただきました。

     議会基本条例は、地方分権時代、二元代表の一翼を担う議会のあるべき姿や議会が果たすべき任務、実施手順などを体系立ててまとめたものです。2006年北海道栗山町議会で初めて制定され、その後、全国各地で制定されるようになり、全国市議会議長会の調査では、2017年12月31日現在、814 市議会中、その60.8%にあたる 495の 市議会で制定済みとなっています。
     早稲田大学マニフェスト研究所の議会改革調査でも、議会改革度の上位100位にランキングされた議会の98%が制定済みで、条例制定と議会改革度はおおむね密接に結びついていることが分かります。

     私は、12年前に、栗山町議会の議会基本条例を知った時、大きな衝撃を受け、いつか八潮市で条例を作る際に役立てようと、あちこちの条例の勉強会に参加してきました。

     全国ではすでに800以上の議会基本条例が作られているので、すべてをチェックしたわけではないけれど、私が知る限り全国初の条項ではないかと思います。

    ある時、市の職員と別のことで話をした際、たまたま条例の話が出て「今、作成している八潮の議会基本条例の中に何か特色はあるのですか?」と聞かれました。私は、「(この条項を念頭に)、ありますけれど、どこで漏れて、反対する人が出てくるかも知れないので、今は言えません」と慎重に回答しました。

     昨年成立した「男女候補者均等法」は、理念法と言われていますが、法成立を受けて、内閣府が毎年実施している「地方自治体における男女共同参画の取り組み状況」の2018年調査では、地方議員の議会活動と家庭生活の両立支援体制を把握するため、地方議会における保育施設・授乳室の整備状況を今回初めて調査したそうです。(1月18日付の自治日報)
     それによれば、「地方議会議員の利用できる保育施設等は2県3市町村しか整備されていない」とのことでした。

     八潮市では庁舎の耐震に問題があり、現在、新庁舎建設に向けて基本設計を策定中なので、この条項を根拠に保育施設・授乳室の整備も提案していきたいと思っています。

     議会基本条例は、今や議会の標準整備となりつつありますが、条例は全国の自治体の約半分しか制定されていません。また、制定した議会でも、条例の中に大抵見直し項目を規定しています。なので、今後、見直す場合には、より多くの議会の条例に、こういった条項が入るように、地方で奮闘している女性議員やこれから立候補を予定している女性を応援するためにもPRしていきたいと思います。

     議員の成り手不足も取りざたされる中、そして何よりも子育て中の若い女性議員を増やし、政治分野における男女共同参画を推進するために、各地の議会基本条例の中に、同じような条項が増えていけばと思います。