えみこ日記

女性ゼロ議会訪問記 川上村の選挙の議員を事実上決定する「マケ」

2018.07.09 Monday

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    松本でのフェミ議連のサマーセミナーの前日、雨の中、女性議員ゼロの川上村を「ゼロ撲チーム」の5名で尋ねました。本当は6名で尋ねる予定でしたが、中央西線が大雨のために運休となり、参加できなくなりました。

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    川上村は小渕沢から小海線に乗り換え信濃川上駅で下車。
    タクシーは常駐していない為、事前に予約しておいたジャンボタクシーに乗り、約20分くらいで役場に着きました。

    余談ですが、この信濃川上駅は、JRの駅では3番目に標高が高く、真夏でも20度以下だそうですが、この日は雨が降っていたので、この服装でも少し寒いくらいでした。

    約束の時間まで少しあったので、役場のとなりの「樹木里(きぎり)」の2階で、お蕎麦を食べました。さすが、日本一のレタス村と言われるだけあって、朝取れの新鮮レタスが食べ放題というサービスがついていました。

    役場に入った所に、等身大の油井 亀美也宇宙飛行士の人形が飾ってあり、川上村が彼の出身地だと知りました。

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    油井飛行士の人形のすぐ横に、川上村の人口が表示されています。外国人男性が約1000人位、季節労働者として住んでいます。ちなみに、今が年間で最も繁忙期だそうです。



    3人の職員、向かって右から、中島企画課長(男性)、由井係長(男性)、原男女共同参画担当(女性)が対応して下さいました。

    なぜ、女性議員がいないのかについては、村内には国道も通っていない為、情報や人口の流入がないから封建的な部分が残っていること。

    人口の7割くらいが農業従事者ということで、「家族経営協定」はどのくらい締結されているのか…と伺うと、(そういうことは)やっていない。そんなことすると家族内でギクシャクする。若夫婦、老夫婦という収入の分け方は、やっているが、嫁に対して給与とか休暇とかという取り決めはやらなくても、すべてうまくいっている、とのことでした。
    しかし、家族経営協定について、職員がどれだけ理解しているのか・・・かなり疑問が残った。今春から農業委員に女性が2名就任したことを自慢そうに話していた。JAでも女性農業委員を増やすことや家族経営協定は推進していたはずです。

    後継者不足もないし、村内には耕作放棄地もないし、未耕作地もなく、すべて活用されているとのこと。

    男女共同参画推進条例の制定は?と聞くと、条例も計画もない。男女共同参画施策については、元気づくり支援金を活用して、女性が参加できるイベントを開催したとのこと。多分その時のDVDを放映する予定だったのかもしれないが、あまりにも質問することが多くて、その時間が取れなかった。

    DVやセクハラについて、窓口はあるのか…と聞くと、「デリケートな問題なので私どもは把握していない」と、今時、あっと驚く回答にビックリ!

    中身でなく、相談の窓口は?と再度聞くと、確か、保健福祉課が担当。相談窓口はあると思うが…と、心もとない回答。わずか70人強の職員しかいない役場、しかも地元出身の職員が多い中、もう少し庁内連携が必要ではないか・・と感じた。

    役場で職員との話し合い後、地元の女性たちと話した。

    なぜ、女性議員がいないのかについては、「子育てや家業で忙しくて、村の議会に興味を抱くことはなかった。選挙は男の人が出るもんだ、と思っていた。女性が、何か言ったところで正直、何か変わるのかという思いもある」

    話しあったのは、全員、村外から川上村に嫁いで来た方ばかりで、そのうちの一人が、「一番びっくりしたのは『マケ』」と言う。

    彼女の説明によれば、マケとは、親戚毎のグループ。例えば、矢澤マケと言うように、苗字でまとまっている組織だそうだ。

    地方に行くと、同じ苗字が沢山ありますが、川上村でも集落ごとに○○マケがあるようです。これが、選挙では大きな役割を果たす。議員になろうと思ったら、まずその所属するマケから選ばれなければならない。選ばれる為には、マケに所属する人たちに、飲み食いをさせてもてなす。これがかなりお金がかかり、聞くところによれば1000万円位は用意しなければならないとか。飲み食いだけで1000万円は、いくら何でも多すぎるのでは・・というと、(飲み食いや会合に)長靴をはいて行くと聞いた。長靴の中にお金をいれてもらえるのだそうだ。

    こうしてマケから選ばれた候補者は、定数12に対して12で、二期連続無投票の状態。別の言い方をすれば、事前に候補者を調整済みをしているように感じた。ちなみに村長選も4期連続無投票。

    川上村の議員報酬は、月16万1000円だから、1000万円もかけて議員になってもあまりメリットはないのでは?と思うけど、村の予算を決めるところは議会が担うから、私たちの分からないところでメリットはあるのかもしれない。

    じゃあ、そのマケから女性を指名すれば、女性議員は誕生するのでは…と言うと、「女性が選ばれることは絶対ない。何につけ、この村には女性が一歩出ることは絶対ない。子どもは宝だから、男女別なく育てている。でも、大人になって、嫁さんになったら夫に従うものだ、と諦めている。だから、女の子は、大人になると大抵村外に出ていってしまう」そうです。

    農家の嫁というスタイルが確立していて、そこからはずれると変な目で見られる。3世代同居もあり、昔はこうだったと、今の女性たち(嫁)の生活を制約しようとする。監視カメラがあるわけではないが、目に見えない監視カメラで取り囲まれているようで、息苦しく感じることもあると。実際、自殺者も何人かいると、聞きました。

    男尊女卑が厳しく、中でも一番身分が低いのは嫁。夫が死んでも、長男が喪主になり、妻が喪主になることはない。

    話を伺いながら、この川上村に女性議員が誕生するのはいつのことだろうと、暗い気持ちになったが、埼玉県の東秩父村のことを思いだした。東秩父村も長い間女性ゼロ議会だったが、昨年、女性候補が2名立候補して2名当選している。

    川上村では、「マケ」が大きな役割を果たしているが、女性ゼロ議会の町村では、案外このマケのような組織(名前は異なるが)が残存しており、それが女性の議会進出を阻んでいるのかもしれないと、思いました。

    私は初めて立候補した当時は、八潮市議会では女性議員が一人しかいなかったが、私が立候補を表明したら、公明党も初めて女性候補を擁立。さらに共産党も2人目の女性候補を立て、結果、一挙に女性議員が4人になったのですが、この選挙戦の中、地元の男性から「この部落には、2名の議員がいる。東西で一名ずついるが、あんたが立候補して票が分散し、共倒れになったらどう責任を取ってくれるんだ?」と、クレームをつけられたことがありました。

    こういう村の現状を変えるには、複数同時に立候補すると、案外良い結果がでるかもしれないと考えながら帰途についた。来年は統一地方選、候補者男女均等法成立後の初めての選挙、川上村も変わらなくては・・・変わって欲しいです。

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    写真は一部加工しています。

    「マケ」という言葉は、川上村で初めて耳にしましたが、 平凡社版の世界大百科事典によれば、
    マケとは、…本家とその親族分家や奉公人分家,また直接分家だけでなく間接分家(分家の分家,すなわち孫分家とか又分家と呼ばれた家)をも含む組織集団。農山漁村社会でマキ,マケ,マツイ,カブウチ,イッケ,クルワなどとも呼ばれ,商人社会ではノーレンウチなどとも呼ばれた。社会学,民族学,民俗学,社会人類学によっては同族団(同族集団,同族団体,同族組織)と呼ばれ,国際学界でもdozokuの名でとおり,クランclanやシブsibとは区別されている。…とありました。