えみこ日記

人格権侵害とは

2010.04.01 Thursday

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     昨夜、フェミ議の世話人会で、一昨日逆転勝訴となった三井マリ子さんから裁判の報告を聞きました。

     勝訴の理由となった「人格権侵害」は、聞き慣れない言葉ですが、簡単に言うと、人を雇う側には労働者を「人間扱い」すべき法的義務があるということだそうです。
     つまり、労働者は単に労働を提供して賃金を受けるだけの存在ではなく、例えばこの裁判の三井さんの場合なら、「すてっぷ」の館長として、組織体制の変更等について情報を知っていなければならない立場にいたにもかかわらず、豊中市や財団によって意図的に情報を遮断されていたこと。

     さらに、部下や周囲に、言ってもいない虚偽の情報を流された上、すでに採用する人が決まっているのに、公正さを装って、面接選考を受けさせられたこと。
     こうした市や財団の行為によって、三井さんの「人間としての尊厳」をもて遊んだ、と結論付けたのです。

     セクハラ、パワハラはもちろんダメですが、それだけでなく、雇用主が強い人事権をもっているからこそ、雇用主は労働者の尊厳を傷つけないような職場環境を整えなくてはいけない義務があるということです。

     そういう意味からすれば、リストラ目的で、専門職の人をいきなり畑違いの窓口事務等に回し、本人に屈辱的な思いをさせて、自ら辞めざるを得ないように仕向けるような乱暴な人事異動なども、この「人格権侵害」に当たるのではないでしょうか。
     
     三井さんの逆転勝訴には、2007年の山梨県昭和町事件(最高裁への上告棄却によって確定した高裁判決)の影響がかなり大きいということです。

     三井さんの高裁裁判には多くの人が意見書を提出していますが、特に、労働法、ジェンダー法双方の権威である浅倉むつ子早稲田大学大学院法務研究科教授の意見書は、裁判を闘う三井さんや多くの支援者に勇気や希望を与えた至高の論文で、その中で豊中市の取った行動は、三井さんに対する「人格権侵害以外の何ものでもない」と断定しています。

     その山梨県昭和町事件とは、以下のようなものです。

     山梨県昭和町立温水プールに勤務していた元嘱託職員の女性2人が、当時の佐野精一町長の妻のうわさを触れ回ったなどとして、平成15年3月、町長から半年ごとに更新されていた嘱託契約の打ち切りを通告された。

     女性2人は、一方的に契約を打ち切られたなどとして町を相手取り、地位確認と損害賠償を求め訴訟を起こした。

     高裁判決では、町長に対して「合理的理由もなく再任用を拒否し、人格的利益を著しく傷つけた」として女性2人に慰謝料などの支払いを命じた。

     さらに、この判決を不服として町長が上告したが、最高裁第3小法廷は町の上告棄却を決定し、町に対して2人に各100万円支払うよう命じた2審・東京高裁判決が確定したものです。

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     町のHPによれば、人口16,850人、平成21年度の予算は、一般会計の他、7つの特別会計を合わせ約104億2百万円の財政規模の町です。
     甲府盆地の中心に位置し、県内で唯一「山のない町」で、 釜無川と笛吹川の中間に開けた平坦な地域であり、古くから豊かな水の恵みを利用して、穀倉地帯として発展した所で、武田信玄公の時代の先駆けを成す甲斐源氏ゆかりの歴史の町でもあるようです。
     
     長く都市近郊の農業地域として発展してきたが、県都甲府に隣接する地理的条件から、都市化の波が押し寄せ、宅地化が進み、昭和50年以降は東西に工業団地を造成し、新興工業地域として大きく発展 してきた町ということです。

     都市化の波が押し寄せてきてはいるものの、まだまだ古い因習の残るであろう町で、元嘱託職員、しかも女性が、町を相手取って裁判を起こすことは、どんなに大変なことだったか・・・想像し難い多くの苦労があったに違いありません。けれど、不当な雇止めに屈服することなく裁判に訴えた2人の女性の行動によって、「人格権侵害」という高裁判例が確定したのです。

     三井さんも、この勇気ある女性たちのことについては、「すごいこと」で、頭が下がる思いだと言っていましたが、私も同じ考えです。

     この判例があるため、仮に豊中市が上告したとしても、覆すことはかなり難しいと思いますが、豊中市はこれ以上税金の無駄遣いをしない為にも、上告すべきではないと思います。